SHIOGAMA / NEKO KAMADO
塩竈の小さな工房から生まれる、やさしい時間。
猫と生きる人のために、竈に火を入れる。
気づけば、ずっとこの港町に育ててもらっていた。
この街をもっと盛り上げたい。それは、誰かに言われてやることではなく、自分の手ではじめることではないか。そう考えて行き着いた先は、「猫」だった。生まれたときから、隣にはいつも猫がいた。猫のいない暮らしのほうが、むしろ想像しにくいものだった。
母がクレープ店を営んでいたその場所で、2023年、彼は母とふたりで菓子製造業をはじめた。社名は「NEKO竈」。猫と、塩竈の"竈"を重ねた、ひとつの造語だった。
猫をきっかけに商品を知ってもらい、いつかこの街そのものも、知ってもらいたい。
塩竈は、港町である。人口あたりの寿司店の数は、日本のどこよりも多いと言われている。塩竈港に揚がったばかりの魚と、朝の空気に混ざる潮の匂い。東北屈指の歴史を持つ鹽竈神社があり、夏には海の上を船が渡る「海上渡御」を含む港まつりが、街をゆっくりと彩る。
凪いだ水面に浮かぶ漁船、行き交う潮の匂い、遠く霞む松島の島影。NEKO竈が選んだ深い藍色と木目の温もりは、この港の風景から、そのまま受け継いだものです。
看板商品「こねこのしおちゃん」は、母が営んでいたクレープ店から生まれた。猫の肉球のやわらかさを、もちもちとした食感に重ねてみよう——そう思いついた。
はじめは、今よりずっと大きなサイズだった。近所の小中学生から「おやつにちょうどいいサイズがほしい」という声をもらい、気軽につまめる大きさに見直した。商品名に「こねこ」の文字を足したのは、そのときだ。
もうひとつの物語、「ねことさかな」
お酒好きが高じて生まれたのが、甘くないお菓子「ねことさかな」。姿は猫のまま、大人の時間に寄り添うおつまみクッキーとして誕生した。日本酒造りの盛んなこの土地で、地元のお酒とも楽しんでほしい。
定番の味だけでは、選ぶ楽しさがない。だから、聞いたことのない味を、いつもどこかに残しておく。
肉球のふくらみ、輪郭のひとつひとつに、猫と暮らす者にしかわからない細部を。
工房で焼き上げる。量産では届かない温度を大切にしています。
藻塩をはじめ、海に近い風土をお菓子の中にそっと映しこんでいます。
菓子はきっかけにすぎません。その先に、塩竈という港町があります。
朝がまだ浅い時間、工房に生地をこねる音が響く。
母と息子、ふたりの手だけで進む静かな作業。窓の外を、一匹の猫がゆっくりと通り過ぎていく。
NEKO竈のお菓子は、そんな日々の積み重ねから生まれています。